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一般貨物運送事業許可、ついに5年更新制へ!その根拠と背景を徹底解説
長らく業界内で噂されてきた「一般貨物自動車運送事業の許可が5年更新制になる」という話。ついに具体的な法改正の動きとして現実味を帯びてきました。今回は、この重要な変更の根拠と、堀内が予想する制度の趣旨について深掘りしていきます。
一般貨物事業許可の5年更新制、その確かな根拠とは?
「本当に5年更新制になるの?」と思われている方もいるかもしれません。
しかし、この情報は単なる噂ではなく、確かな根拠に基づいています。
- 「貨物自動車運送事業法」改正案と「トラック事業適正化関連法案(仮称)」の具体的な議論
現在、自民党トラック輸送振興議員連盟を中心に、物流業界の健全化を目指した重要な法案が検討されています。
この法案の目玉の一つが、まさに一般貨物自動車運送事業許可の「5年ごとの更新制度」の導入なんです。
すでに2024年5月23日には、この「トラック事業適正化関連法案」が衆議院国土交通委員会で了承され、衆議院を通過する見通しと報じられています。
これは、法制化への道がかなり具体的に進んでいることを意味します。 - 全日本トラック協会(全ト協)からの強い提言
業界団体である全日本トラック協会(全ト協)の坂本克己会長も、積極的にこの5年更新制を構想の柱として提唱しています。
業界のトップが、自ら問題意識を持って更新制度の導入を強く求めている点も、実現への大きな後押しとなっています。 - 貸切バス事業の先行事例との整合性
実は、貸切バス事業ではすでに5年ごとの更新制度が導入されています。
同様の更新制度を一般貨物事業にも適用することで、運送業界全体の許可制度に整合性を持たせる狙いもあると考えられます。
これらの動きを見ても、一般貨物自動車運送事業の許可が5年更新制になることは、ほぼ確実と言っても過言ではありません。
多重下請構造是正への動きと、その法的な枠組み
一般貨物運送事業の健全化を語る上で避けて通れないのが、長年問題視されてきた多重下請構造です。
この構造が、ドライバーの低賃金や劣悪な労働環境、ひいては交通安全問題にもつながる根源の一つとされてきました。
この多重下請構造の是正についても、更新制と並行して具体的な規制措置が打ち出され、一部は2024年4月1日から施行されています(2025年4月1日施行の条項もあります)。
主なポイントは以下の通りです。
- 実運送体制管理簿の作成義務化
元請け事業者が、実際に運送を行う事業者(実運送事業者)の名称や、何次下請けであるかなどを記載した「実運送体制管理簿」の作成・保管が義務付けられます。これにより、荷主を含めサプライチェーン全体の透明性が高まり、実態が把握できるようになります。 - 運送契約時の書面交付義務の強化
荷主と元請け事業者間、そして元請け事業者と下請け事業者間など、運送契約を締結する際には、運送役務の内容、運賃・料金(燃料サーチャージや附帯業務料を含む)を記載した書面の交付が義務付けられます。これは、不当な「買いたたき」や曖昧な料金設定を防ぎ、適正な取引を促すことを目的としています。 - 多重下請け次数の制限に向けた提言と議論
全日本トラック協会からは、「下請けは2次下請けまでと制限すべき」といった具体的な提言もなされています。法案では、元請け事業者に再委託回数の制限など、下請けに条件を付すことが努力義務として求められています。
これらの措置は、複雑になりすぎた下請構造を是正し、実運送を担う事業者やドライバーに、適正な運賃が届く仕組みを構築するためのものです。
堀内が予想する制度導入の趣旨
なぜ、今このタイミングで一般貨物事業の許可に5年更新制が導入されようとしているのでしょうか?
堀内が予想するこの制度の趣旨は、物流業界が抱える深刻な課題を解決し、持続可能で健全な発展を促すことにあります。
- 悪質事業者の排除と業界の健全化
現在の一般貨物運送事業では、一度許可を取得すると、よほど重大な法令違反がない限り事業を継続できてしまいます。
これが、不適切な運賃設定や劣悪な労働環境を招く悪質事業者の温床となり、業界全体の収益を圧迫し、イメージを損ねる原因となっていました。
5年ごとの更新制を導入することで、定期的に法令遵守状況、財務状況、安全管理体制、そして労働環境などを厳しく審査し、基準を満たさない事業者を市場から排除することが可能になります。
これにより、過度な競争が是正され、市場の透明性が向上することが期待されます。 - ドライバーの労働環境改善と人材確保
低運賃競争のしわ寄せは、最終的にドライバーの長時間労働や低賃金に直結し、「2024年問題」に代表される深刻なドライバー不足を引き起こしています。
更新制において、適正な運賃収受や労働環境の確保が重要な審査項目となることで、一般貨物運送事業におけるドライバーの待遇改善が進み、若年層の人材確保にも繋がる可能性があります。 - 安全対策の強化と事故の削減
安全性は、一般貨物運送事業の根幹です。安全管理体制の構築状況や事故防止対策の実施状況が更新審査の対象となることで、事業者はこれまで以上に安全意識を高め、より厳格な安全管理を行うよう促されます。
特に近年問題視されている軽トラック運送業における死亡・重傷事故の増加といった現状を鑑みると、安全性確保は喫緊の課題であり、この更新制度がその解決に寄与するでしょう。 - 適正な運賃収受の促進
「適正原価」を下回る運賃での運送を制限する規定と合わせて、この更新制度を通じて一般貨物運送事業者が適正な運賃を収受できる環境を整備する狙いがあります。
ダンピング競争に歯止めをかけ、事業者の経営基盤を強化することで、持続的な事業運営を可能にします。 - 多重下請け構造の是正
複雑な多重下請け構造は、運賃が不当に削減され、最終的に末端のドライバーに過度な負担がかかる大きな原因です。今回の更新制度や、再委託回数の制限などの措置を通じて、この構造を是正し、より公平で透明性の高い取引環境を構築することも、制度の重要な目的の一つと考えられます。
予測される更新の必要書類
一般貨物自動車運送事業の許可が5年更新制になった場合、現在検討されている法改正案や、先行して更新制度が導入されている貸切バス事業の状況から推測すると、以下のような書類の提出が求められる可能性が高いです。
もちろん、具体的な書類名やフォーマットは今後の省令などで定められることになりますが、審査項目から考えて、現在の新規許可申請時に必要な書類に加え、過去5年間の事業実績や法令遵守状況を示す書類が求められるでしょう。
1.申請に関する基本書類
- 更新許可申請書: 新たに定められる様式で、事業の概要や更新希望の意思を示すもの。
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)/戸籍抄本、住民票(個人の場合): 申請者の基本情報。
- 定款の写し(法人の場合): 事業目的の確認。
- 役員全員の履歴書(法人の場合)/事業主の履歴書(個人の場合): 役員の変更がないか、欠格事由に該当しないかの確認。
2.財務状況に関する書類
事業の継続性や健全性を審査するため、以下の書類が重要になります。
- 直近5期程度の決算書(貸借対照表、損益計算書): 財務状況の健全性、債務超過の有無、収益性の安定性を審査。
- 残高証明書: 所要資金(事業運営に必要な資金)が常時確保されているかを確認。
- 事業収支見積書(今後5年間の事業計画を含む): 貸切バス事業で求められるように、今後の事業計画と収支見込みを提出させ、適切な収支計画が立てられているかを確認する可能性。
3.安全管理体制に関する書類
安全性が最も重視されるため、多岐にわたる書類が求められるでしょう。
- 安全管理規程: 安全運行のための内部規定。その遵守状況も審査される可能性。
- 運輸安全マネジメントに関する書類: 運輸安全マネジメントの実施状況(計画・実施・評価・改善のサイクル)。Gマーク(貨物自動車運送事業安全性評価事業)の取得状況も有利に働く可能性があります。
- 運行管理者・整備管理者の選任届の写し、資格者証の写し: 適正な運行・整備体制が継続されているか。
- 運転者台帳、乗務記録、点呼記録、日報: 運転者の健康状態、労働時間、休息時間、運行状況の管理が適切に行われているか。
- 健康診断受診記録、適性診断受診記録: ドライバーの健康管理状況。特に過労運転防止のための健康状態の把握が重要視されます。
- 自動車事故記録簿、事故報告書: 過去の事故状況とそれに対する改善措置の実施状況。
- 車両整備記録(定期点検、日常点検等): 車両の点検整備が適切に行われているか。
- 任意保険の加入状況を証する書類: 対人・対物賠償が無制限または十分な額に加入しているか。
- デジタルタコグラフ、ドライブレコーダーの導入状況を示す書類(任意): 安全投資の実績として提出を求められる可能性。
4.労働環境に関する書類
「2024年問題」に代表される労働環境改善が重点課題であるため、以下の書類が厳しくチェックされると予想されます。
- 就業規則(従業員10名以上の場合)と労働基準監督署への届出控え: 労働時間、賃金、休日、有給休暇などが適正に定められているか。
- 36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)の写しと届出控え: 時間外労働の上限規制(年間960時間)遵守状況。
- 賃金台帳、労働時間管理の記録: ドライバーの労働時間・休息時間の実態。改善基準告示の遵守状況。
- 社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険)の加入状況を証する書類: 法定福利厚生が適切に行われているか。
5.施設・車両に関する書類
- 営業所・車庫の土地・建物の登記簿謄本または賃貸借契約書の写し: 使用権限の継続性。
- 営業所・車庫の平面図、配置図、写真: 適切な施設が維持されているか。
- 車庫前面道路の幅員証明書: 継続して適切な運行経路が確保されているか。
- 車検証の写し(全車両分)、リース契約書、ローン契約書: 車両の所有・使用状況。
6.その他
- 事業実績報告書、事業概況報告書(過去5年分)の写し: 事業の継続的な運営状況。
- 巡回指導の結果(写し): 巡回指導で改善を求められた事項への対応状況。
- 実運送体制管理簿: 多重下請構造の是正に関する取り組みとして、作成・保管状況が審査される可能性。
更新制の導入は、単なる書類提出の手間が増えるだけでなく、事業運営全般におけるコンプライアンス(法令遵守)と安全管理の徹底、そしてドライバーの労働環境改善への取り組みがより一層厳しく問われることを意味します。早めの準備と、日頃からの適切な事業運営が重要になるでしょう。
まとめ
一般貨物自動車運送事業の許可が5年更新制になることは、多重下請構造の是正と並び、業界にとって非常に大きな転換点です。これらは単なる手続きの変更ではなく、物流業界が長年抱えてきた構造的な問題を解決し、「2024年問題」を乗り越え、持続可能で質の高い物流サービスを提供できる体制を構築するための、包括的な改革の一環と言えるでしょう。
今後の法案の動向に注目し、来たる更新制、そしてすでに一部施行されている多重下請構造の是正に関する新たな義務に備えることが、一般貨物運送事業者の皆様にとって非常に重要になります。
お気軽に、ご相談・ご依頼くださいませ
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