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【行政書士が解説】特殊車両通行許可申請の基礎知識:なぜ必要なのか、どんな種類があるのか?
今回は、物流や建設を支える事業者様にとって非常に重要な手続き、「特殊車両通行許可申請」について、その基礎知識を深く掘り下げていきます。日本の道路を安全に、そして効率的に利用するためには、車両制限令というルールを守る必要があります。しかし、積載物や車両構造によっては、このルールで定められた「一般的制限値」を超える車両(特殊車両)で通行しなければならないケースも少なくありません。そのような場合に必要となるのが、この特殊車両通行許可です。
この記事では、特殊車両通行許可申請の基本的な概念、なぜこの許可が不可欠なのか、そして申請にはどのような種類と分類があるのかを分かりやすく解説します。
1. 特殊車両通行許可申請の核心:なぜこの許可が不可欠なのか?
特殊車両通行許可申請とは、車両の幅、長さ、高さ、総重量、軸重、輪荷重、最小回転半径といった寸法や重量が、道路法や車両制限令で定められた「一般的制限値」を超える車両が、国の管理する公道(国道、都道府県道、市町村道など)を通行するために、事前に許可を得る制度です。
1-1. 一般的制限値とは?
道路の構造を保全し、交通の危険を防止するために、道路法および車両制限令によって車両の大きさや重さに関する基準が設けられています。これが「一般的制限値」です。具体的な基準は以下の通りです。
- 幅: 2.5メートル
- 長さ: 12.0メートル
- 高さ: 3.8メートル(一部指定された道路では4.1メートル)
- 総重量:
- 2軸車:20.0トン
- 3軸車:25.0トン
- 4軸車:20.0トン(単車)または25.0トン(フルトレーラ、ただし特定の条件あり)
- 連接車・トラクタ+トレーラ:25.0トンから最大36.0トン(車両の種類や軸数によって変動)
- 軸重: 10.0トン
- 輪荷重: 5.0トン
- 最小回転半径: 12.0メートル
これらの基準のいずれか一つでも超える車両は「特殊車両」とみなされ、許可なしに通行することはできません。
1-2. 無許可通行のリスク
もし特殊車両が許可なく公道を通行した場合、以下のような重大なリスクと法的責任が伴います。
- 道路構造の損傷: 基準を超える重量の車両は、橋梁やトンネル、舗装路面などに過度な負荷をかけ、損傷を引き起こす可能性があります。これは社会インフラの劣化に直結します。
- 交通事故のリスク増大: 不安定な車両挙動や、カーブでの車線逸脱など、交通の安全を脅かす原因となることがあります。
- 罰則の適用: 道路法に基づき、違反者には罰金が科せられる可能性があります。また、運送事業者には行政処分が下されることもあり、事業継続に大きな影響を与えかねません。
- 社会的信用の失墜: 法令遵守意識の低い事業者として、企業イメージが損なわれる可能性もあります。
これらのリスクを回避し、安全かつ合法的に事業を遂行するために、特殊車両通行許可は絶対に欠かせないものなのです。
2. 申請の全体像:種類と分類を理解する
特殊車両通行許可申請には、その目的や期間、通行方法によっていくつかの分類があります。ご自身のケースに最適な申請方法を選択することが、スムーズな許可取得への第一歩となります。
2-1. 申請の種類:新規・更新・変更
- 新規申請: 特殊車両としての許可を初めて取得する場合に必要です。車両の登録から経路の選定まで、最も詳細な情報が必要となります。
- 更新申請: 既に許可を取得しており、その許可期間が満了する際に、引き続き同じ車両と経路で通行許可が必要な場合に行います。許可期間の満了日が近づいてきたら、早めに手続きを開始することが重要です。
- 変更申請: 既に取得している許可の内容(例:車両の構造、積載貨物の変更、通行経路の追加・変更など)に修正が生じた場合に必要です。許可を得た内容と実際の運行が異なる場合、無許可通行とみなされる可能性があるため、速やかに変更申請を行いましょう。
2-2. 許可期間と事業区分:普通と包括
申請には「普通申請」と「包括申請」という大きな区分があります。
- 普通申請: 特定の車両(または車両編成)が、明確に定められた単一の経路を、1回または数回(短期間)通行する場合に適用されます。例えば、建設現場への大型機材搬入など、単発の運搬業務に適しています。許可期間は通常、通行に要する最小限の期間となります。
- 包括申請: 同一の特殊車両で、複数の区間や不特定の経路を継続的・反復的に通行する場合に利用できます。例えば、日常的に複数の工事現場を巡回する重機運搬車や、広範囲にわたる輸送を行う事業者にとって非常に有用です。許可期間は最長2年(車種や通行条件による)となり、一度許可を得れば、その期間内は申請経路内のどこでも通行が可能になります(ただし、別途条件が付される場合もあります)。効率的な運用を考えるなら、この包括申請の活用を検討すべきでしょう。
2-3. 通行区分:片道・往復・片道・往復
通行の方向によっても申請の区分があります。
- 片道申請: 特定の経路を一方通行のみで許可を取得する場合。
- 往復申請: 特定の経路を往路・復路の両方で許可を取得する場合。
- 片道・往復: 複数の経路を申請する際に、ある経路は片道のみ、別の経路は往復でといった形で混在している場合に用いる区分です。
最後に
特殊車両通行許可申請は、道路交通の安全と社会インフラの保護のために非常に重要な制度です。ご自身の車両が「特殊車両」に該当するかどうか、そしてどの申請区分が最適かを理解することが、許可取得への第一歩となります。
次回の記事では、これらの申請に必要な書類の具体的な作成要領や、複雑な「軌跡図」の必要性、そして行政書士に依頼するメリットについて、さらに詳しく解説します。ぜひそちらもご参照ください。
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